vol.8 つくる、つたえる、木工の魅力。/辻好弘

8回目のTALK BARは、アルブル木工教室で木工インストラクターをされている辻 好弘さんをゲストに迎えました。こちらの教室へは前回ゲストの金澤さんも通われているそうです。

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辻さんは、デザインの専門学校を卒業後、広告や映像の仕事に携わられ、あることを機に今の「木工インストラクター」に転身されたそうです。その中でまず始めに、広告業界のお話からお伺いしました。

広告業界では、企業のCMなど映像関係の仕事を「監督」の立場で携わられていました。企画からロケハン、モデルさん選びまでほぼすべて任され、やりがいもあり、とても楽しいものだったそうです。しかし、流行り廃りの影響が大きい広告の仕事を続けていくことへの違和感を少しずつ感じられていました。

転職するきっかけになったのは、ある夜見た夢からだそう。夢の中でアフリカの奥地の民族に捕らえられ「お前は何ができる?」と問われた辻さんは「CM(映像)でこの村をアピールできる」と応えたものの「それは何の役にも立たない」と殺されてしまいます。そこから辻さんは、よりシンプルで形のある仕事として、ものづくりの分野へと進まれました。

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「アルブル木工教室」は、それぞれの生徒さんが作りたいものを専門のインストラクターと一緒に作っていき、その過程で技術や知恵を教わっていくという、カリキュラムの無い自由なスタイルの教室。「大宝木材」という材木屋さんが「斜陽産業の材木業界をもっと盛り上げていきたい」という想いのもと、8年前に立ち上げられました。4年前には「NPO法人木育フォーラム」を発足し、子どもを対象としたワークショップなど、一般の方にも木に慣れ親しんでいただける場を設けることで心と森を育てる活動をされています。これら「大宝木材」「アルブル木工教室」「NPO法人木育フォーラム」が三位一体となって活動しており、辻さんはその全てに関わられているそうです。

その中で「日本では家具に対する理解が普及していない」と話す辻さん。
例えば家具で有名な北欧では、夜が長く家に居る時間も長いため、空間にお金をかけることで暮らしを豊かにする文化がありますが、日本ではPCや腕時計、洋服など外でも使えるものに目が行きがちで、家具にお金をかける価値観や文化が育っていません。
そこで、自分で家具を作るより、職人が作った家具の素晴らしさを伝える側に立ち、家具への理解を深めたいという想いのもと、今の「木工インストラクター」の仕事に従事されています。

転職してよかったと思うことは何ですか?という質問に、「今までは自分には確固としたものは無いと思っていましたが、作るという、より原始的なところに行き着くことで、そんな自分の確固たる芯が見えたことです。そしてその先の世界が自分のやりたいことに近いものだと知ることができたことです」と話される辻さんは、今歩まれている道に自信と誇りを持っておられるようでした。

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また、今回のTALK BARでは、実際に木に触れていただくために、お箸作りワークショップも開催。チェリーとウォルナットの木材をカンナとサンドペーパーで削り、世界でひとつだけのお箸を作りました。下の写真が実際にお客様が作られた完成品です。角材の状態からお箸の形に削り出すのは手間と時間がかかりますが、その分、それぞれの作者のこだわりが出ていて、素敵でした!

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以上、イベントレポートでした!次回もおたのしみに!

 


 

辻 好弘(アルブル木工教室

10年続けた広告業界を辞め、木工の世界へ。
オーダー家具製作所に車中泊しながら勤める。そこで培った「『無い』を遊ぶ」を大事に、現、材木屋の営む。「アルブル木工教室」指導員、兼、「NPO木育フォーラム」 スタッフ。
「つくる事でわかる『価値』」を伝えるべく奔走中。
1981年 新潟県佐渡市生まれ
2001年 fujicolor video tec 勤務(しながら家具をつくりはじめる)
2005年 TV局映像プロダクションと合併。ディレクターとして勤務。
2011年 木工職業訓練校へ
2012年 オーダー家具製作所に勤務
2014年 現アルブル木工教室責任者

 

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