vol.7 人も物も幸せになる売り方/金澤知加

7回目のTALK BARは、フランスアンティークとアーティスト作品を扱うギャラリーショップで販売をされている、金澤 知加さんをゲストに迎えました。前回ゲストの竹﨑伸一さんとは、作家と販売という違った立場であることからお互いに興味を持たれ、仲良くされているそうです。

ヘアメイクアーティストとして美しさの本質を求めるうち、アンティークや芸術作品に心惹かれ、現在のギャラリーに勤務されることに。それから20年近くこの道一筋の金澤さんが考える「売ること」とは、作家さんとお客さんをつなぐ、例えるなら「黒子」のような存在であることでした。
今回のTALK BARでは、金澤さんの考える「お客様との出会い」「感動してもらう接客」「人から人へつなぐ販売」の大きく分けて3つについてお話しいただきました。(上の写真は、金澤さんがヘアメイクアーティスト時代に実際に使用していたヘアメイクボックスで、今でも持つと当時のことを思い出して緊張されるそうです。)

まず始めに、「お客様との出会い」について。
多くのお仕事では事前に名乗ってアポをとるところから始まりますが、販売のお仕事は何の前触れも無くお客様と出会うところから始まります。

金澤さんは「こんにちは」と声をかけたときのお客様の反応で様子を見るのだとか。
その中でも「初めての来店で勝手がわからない」「売りつけられたらどうしよう」といったような不安が理由で「声をかけられたくない」お客様には、相手が「はい/いいえ」で答えられるような話し方をするなど、早く安心していただけるように
心掛けられているそうです。

次の「感動してもらう接客」についてでは、実際にお店で売られていた商品を持ってきていただきました。

「売れなくてもいいから、何かひとつでも感動して帰っていただきたい」
そう言われる金澤さんの販売は「このグラスは手にしっくりくる場所があるので、触って探してみてください!」など、語れば語るほど、その商品の魅力に興味や愛着を持ち、全員が引き込まれました。
金澤さん自身が、商品の背景を熟知し、心から愛着を持たれているからこそ、お客様に響き共感を得ることができるのかもしれません。

「商品の価値と値段はイコールでないといけないと思っています。見た目だけで“10,000円もするのは高い”と判断されてしまうのは、お客様にとっても、物にとっても、作り手にとっても、もったいない。作家名などの情報よりもまず始めにお客様が感じられたことが一番大事、というのが大前提。その上で、見ただけではわからない物の背景をお客様に伝え、商品の価値と値段について納得していただくことも販売の務めのひとつです。」

そう話される金澤さんから、物の売れる売れないを大きく左右する、販売する側が担う責任の重大さが伺えました。

最後に、「人から人へつなぐ販売」について。

「コップ1つでも、重さ、触り心地、色味などを吟味して選び抜いた物は、本当に愛着が沸くもので。そういったストーリーを持つコップで水を飲むと、いつもと違っておいしく感じますよね。それって、ほんの小さなことだけど暮らしが変わるんです。そして、暮らしが変わるということは、人生が変わるんです」

そう語られる金澤さんは、商品を購入していただいて初めて、お客様とのお付き合いが始まると思われるそうです。
お客様がその物を通して見出した小さな幸せや気づきを、またご来店いただいたときにお話ししてくださる。そしてそれを自分だけに止めず、作り手へと伝えると、作り手の気持ちにも大きく反映され、より素晴らしい物が生み出される。
売ることで、お客様と物と人生を共にし、作り手も交えた繋がりを作り続けていく金澤さんの販売は、まさに「人も物も幸せになる売り方」だと感じました。

以上、イベントレポートでした!次回もおたのしみに!

 


 

金澤 知加

1975年生まれ。
ヘアメイクアーティストとして美しさの本質を求めるうち、
アンティークや芸術作品に心惹かれ、現在のギャラリーに勤務。
売るという事は、伝えるという事。
その想いを持ち続け20年近く。
日々、アンティーク、アーティスト作品の魅力を伝える日々です。
プライベートでは、自身のカフェを構想中。。。

 

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